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アメリカ医学界から発信された衝撃的な報告

■アメリカ国立がん研究所所長の連邦議会での証言

こうしたがん医療、がん治療の問題点を検証しているのが、最大の医学拠点であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)や同研究所に所属しているアメリカ国立がん研究所(NCI)を中心とする医学界です。

1985年、世界的ながん研究の最先端機関であるアメリカ国立がん研究所のデビッド・シトランスキー所長は、アメリカ連邦議会において次のように証言しました。「抗がん剤でがんは治せないというのが、はっきり分かった。分子生物学的に見ても、これを立証してしまったのだ。抗がん剤を投与しても、がん細胞はすぐに反抗がん剤遺伝子を変化させ、抗がん剤を無力化してしまう。それは、害虫が農薬に対して抵抗力を持つのと同じ現象だ。さらに抗がん剤は、がんと闘うリンパ球を生産する造血機能を徹底的に攻撃するため、抗がん剤を投与することで、かえってがんを増殖させることが分かった」

この証言を発端として、アメリカではがん治療に対する新たな治療法が研究され、医療現場で盛んに取り入れられるようになりました。その治療法として注目されたのが代替療法で、こうした代替療法の研究開発と発展により、がんによる死亡率が減少するという、まさに日本とは違った道を歩んでいるのです。

▲アメリカ国立衛生研究所には代替医療局やアメリカ国立がん研究所などが設置されている

▲悪性新生物(がん)による死亡率の推移(人口110 万人当たり)

■がん治療に代替療法が研究されている理由

ただ、アメリカ国立がん研究所の報告にもありますように、問題点が提起されているからこそ、日本においても代替療法によるがん治療、もしくは副作用を軽減するなどの標準治療を補うがん治療として、代替療法を一つの選択肢として見直されようとしています。

近年、日本においてもアメリカ医学界の新しい流れもあり、様々な代替療法が研究されています。リンパ球療法とか免疫療法、ビタミンC点滴療法、ワクチン療法、漢方療法などがあります。とはいえ、日本ではまだ、代替療法は二次的な扱いで、多くの病院では標準治療が中心です。その理由として、代替療法には標準治療に比べてエビデンス(科学的根拠)が少ないということでした。
けれども、アメリカの医学界では、代替療法によるがん研究、がん治療の最先端を歩んできました。そして、がん治療だけではなく、医療費の高騰に悩む現状を打破する意味でも、連邦政府のバックアップのもと、様々な医療機関で代替療法の研究がなされてきました。1998年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)に代替療法局(OAM)が設立され、中国医学(漢方医学)とインド医学(アーユルヴェーダ)を代替療法、サプリメント(栄養補助食品)を補完医療として、西洋医療の代わりに用いられる、もしくは補う医療として研究されてきました。中国医学に関しては漢方薬を中心として、鍼灸、按摩、薬膳、気功などの研究も行われています。

アメリカ国立衛生研究所の調査によると、アメリカ国民の62%、つまり3人に2人の割合で、なんらかの代替療法、補完医療を利用しているとされています。なかでも代替療法の多くは概して毒性や副作用が少なく、身体に負担のないもの、それに大部分は自然のものであることが受け入れられている理由でしょう。

■代替療法による医療の新しい潮流

さらに、様々な代替療法の分野の研究開発も進んでおり、ハーバード大学、コロンビア大学、スタンフォード大学など全米で、多くの研究センターが置かれています。代替療法はアメリカを中心に医療の一つの潮流となっています。アメリカ国立衛生研究所にアメリカ国立がん研究所(NCI)が設置されており、がん研究の最先端機関として、あらゆる分野のがん研究が行われているのです。
近年、アメリカ国立がん研究所では生薬、漢方薬の分野での研究が進んでいます。例えば、朝鮮人参や黄蓍の水抽出物により、末期がんの化学療法にともなう副作用を軽減できることが明らかにされ、さらに肺がん、子宮がん、乳がんのがん細胞の増殖を抑制し、腫瘍の委縮と生存期間の延長が観察されたということです。

また、同研究所の「補完代替医療研究レポート」では、代替療法に関して12の研究タイトルが発表され、漢方としては「前立腺がんに対する中国ハーブ(漢方薬)療法に関する研究」「乳がん及び肺がんに対する中国ハーブ処方に関する研究」などが行われたということです。 このように、アメリカ国立がん研究所では、がん治療への応用として生薬、漢方薬についての研究も進んでいます。