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【連載第5回】
がん治療に対する漢方を処方してくれる病院は?

■がん治療に関わる病院、医者は、まだ多くない

外科手術や抗がん治療、放射線療法によるがん治療を受ける際、体のダメージを少しでも和らげて回復を促進することは治療効果を向上させることに繋がります。したがって、多くのがん患者さんが、体力増強に効果のあるものを服用しているようです。また、がん治療のために手術・抗がん剤・放射線などの治療を受けるとき、適切な漢方薬を服用していると治療効果を高めることが可能です。

漢方薬は病気の治療目的で使用するときには保険が使用できます。ですから、がん治療を受けているときは、保険適用内で漢方薬によって体力や免疫力を高めることができるのです。しかし、ここで問題なのがこのことを実際に知っている医師は少ないことと、病院によっては漢方を否定する場合もあるということです。

理由としては、現在の大学の医学部での教育では漢方薬の講義が皆無に等しく、生命機械論(「生命機械論」とは、生命に特別なものはなく物質現象として説明できるという考え方)のような西洋医学による教育しか受けていないので、免疫力や自然治癒力が蔑ろにされていることが挙げられます。

■がん専門病院でも漢方外来が可能に

そんな中、漢方によるがん治療に積極的な病院も、もちろん存在します。がんに対する治療に関して漢方を処方してくれる病院としては、がん専門病院でも漢方外来が配されるようになってきました。主に首都圏では、がん研有明病院(東京都江東区)に漢方サポート科があります。そこでは、外来でできる範囲で、西洋医学と漢方医学の優れた部分の「いいとこ採り」の統合診療が行われています。そのなかで、漢方医学の診療としては、独特の診断方法と治療手段が用いられています。漢方的診断では、視診・聴診・問診・脈診・腹診といった、五感に基づく診察が行われます。そして、決まった漢方薬を投与し、患者さんの反応を参考にし、最終的に最適な治療薬を決定するそうです。

対象となるのは院内各科あるいは他院の医師から紹介された、西洋医学的に治療が困難となった患者さんです。そのような患者さんが抱える症状・病態としては、だるさ、低栄養、冷え、浮腫、不眠…などがあります。さらに、手術・放射線治療・抗がん剤の副作用や後遺症に悩まされるケースは少なくありません。

がん研有明病院の漢方サポート科では、そのようながん自体に伴う苦痛、および治療の副作用や後遺症としての苦痛を軽減し、QOL(生活の質)を向上させ、価値ある延命を目指していると言います。

また、神奈川県立がんセンター(神奈川県横浜市)でも漢方サポート科が配されています。この科が対象にしている患者さんは、次の通りです、

(1)神奈川がんセンターの院内各科あるいはその他の医療施設から紹介された。

(2)神奈川がんセンター以外の医療機関で治療中であり、担当医が漢方治療にとりあえず同意してくれている。

(3)とりあえず相談だけでもしてみたい。

(4)がん患者さんのお世話をしている親族などで体調を崩している。

神奈川県立がんセンターの漢方サポート科では、主として保険適応となっている漢方薬などを活用し、西洋医学的治療の補助、合併症の治療、現在施行されている漢方治療に対する相談などを行っているそうです。

【連載第1回】漢方はがんに対してどのような効果があるのか。
古くから受け継がれる漢方療法とは

【連載第2回】がん治療に漢方が本当に必要な人とは?
4つのパターンから考える

【連載第3回】がん治療にはどのような種類の漢方が効果的なのか

【連載第4回】漢方によるがん治療の費用はどのくらいか